Q:平成20年度税制改正の内容は、どのようなものですか?
A:様々な改正がありますが、中小企業経営に影響のある改正点から説明します。
(1) 減価償却制度の耐用年数区分を390区分から55区分に変更
国際協力強化の視点から、次の見直しが行われます。
1.法定耐用年数区分を大くくり
器械及び装置を中信に、法定耐用年数の区分を40年ぶりに見なおし、実態に即した耐用年数をもとに390ある区分を55区分に集約すると同時に、耐用年数が見直されます。これは海外に比べて凝縮分が細かく税務計算が煩雑であるという産業界の要望に応えたもので、米国並みに簡素化されることになります。
適用は、既存の減価償却資産を含めて、法人の場合は、平成20年4月1日以後開始する事業年度からです。(個人の場合には、平成21年分以降)
表1 主な国の法定耐用年数| 国 名 | 日 本 | 米 国 | 英 国 | 韓 国 | 中 国 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機械装置の 区分数 |
390区分 (設備の種類ごと) ↓ 55区分 |
48区分 (業種ごと) |
1区分 (償却率25%のみ) |
26区分 (業種ごと) |
1区分 (耐用年数ごと) |
(1) 教育訓練費に係る税額控除へ簡素化
教育訓練費が増加した場合の特別税額控除について、その対象が中小企業者等に限定され、労務費に占める教育訓練費の割合(教育訓練費割合)が0.15%以上である場合に、教育訓練費の総額に12%(教育訓練費割合が0.25%未満の場合は次の算式による特別税額控除割合)を乗じた金額の特別税額控除ができる制度に改められます。つまり教育訓練費の増減にかかわらず、教育訓練費の総額に基づき税額控除できる制度に拡充され、従来より利用しやすくなります。なお大企業の場合は適用期限の到来をもって廃止されます。
※「特別税額控除割合」は次の計算式で算出します。
(教育訓練費割合が0.25%未満)
教育訓練費
8%+ ────────────── − 0.15%×40
労務費
(2) 情報基盤強化税制の要件緩和
情報基盤強化税制の対象となる中小企業のソフトウェア投資の要件を大幅に引き下げるなど、次のような見直しをした上、その適用期限が2年延長されます。
1.対象設備等の中に、部門間・企業間で分断されている情報システムを連携するソフトウェアとして一定の要件を満たしているものが加えられます。
2.資本金または出資金が1億円以下の法人等については、対象設備等の取得価額の合計額の最低限度が70万円(従前300万円)に引き下げられます。など
(3) 試験研究開発に係る特別税額控除制度の拡充
試験研究費に係る特別税額控除制度について、試験研究費の増加額に対する特別税額控 割合を上乗せする制度が改められ、平成20年4月1日から同22年3月31日までの間に開始する各事業年度で、次のいずれかを選択適用できる制度が創設されます。
1.試験研究費が前3期の平均額を超え、かつ、前2期のうち多い額を超える場合に、その試験研究費が比較試験研究費を超える部分の金額の5%相当額の特別税額控除ができます。
2.試験研究費が平均売上金額の10%相当額を超える場合に、その超える部分の金額に特別税額控除割合を乗じた金額の特別税額控除ができます。
※「特別税額控除割合」は次の計算式で算出します。
(試験研究費割合―10%)×0.2
この制度は試験研究費の総額に係る特別税額控除制度または中小企業技術基盤強化税制とは別で、その法人の法人税額の10%相当額が限度とされます。したがって税額控除上限は、合計で法人税額の最大30%まで拡充されます。
(4) 交際費等の損金不算入制度の2年延長
交際費等の損金不算入制度について、中小企業者が対象の400万円までの90%損金算入の適用期限が2年延長されます。
また、交際費等の損金不算入制度そのものの適用期限が2年延長されます。
(5) 欠損金の繰戻し還付制度の2年延長
欠損金の繰戻しによる還付の不適用制度として、中小企業者の設立後5年間に生じた欠損金額に係る適用除外措置の適用期限が2年延長されます。
また、この欠損金の繰戻しによる還付の不適用制度の適用期限も2年延長されます。
(6) 少額減価償却資産の一括損金算入制度の2年延長
この中小企業者等の少額減価償却資産の損金不算入制度について、1個の取得価額が30万円未満の少額減価償却資産で、その年間合計が上限300万円までについてはその取得時に損金算入できるという特例制度の適用期限が2年延長されます。
(7) 公益社団・財団法人の公益目的事業の所得が非課税に
公益社団法人及び公益財団法人について、公益目的事業から生じる所得が非課税とされるとともに、すべての公益社団法人と公益財団法人が寄附優遇の対象となる特定公益増進法人とされます。同時に、公益目的事業を行うために使われる収益事業からの繰入れについては、全額の損金算入が認められます。
(8) 特定公益増進法人等への寄付金の損金算入限度額が拡大
一般法人が特定公益増進法人へ等へ寄付金を支出した場合の損金算入限度額について、制度創設の昭和36年以来初めて、所得基準が以下のとおり大幅に拡大されます。
表2| 従 前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 所得基準 | 所得金額の2.5% | 所得金額の5% |
(9) 地方法人特別税を創設
法人事業税(所得割)の税率を引下げたうえで、その引下げで減少する部分の税額を国税として申告納付する地方法人特別税が創設されます。同時に地方法人特別税の税収の全額を人工等一定の基準により都道府県へ譲与する地方法人特別譲与税が創設されます。
(10) 租税特別措置の縮減・廃止・延長
〔縮 減〕
1.中小企業等基盤強化税制
その対象から中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の異分野連携新事業分野開拓計画に係る措置が除外されます。
〔廃 止〕
2.経営革新計画を実施する中小企業者に対する特定同族会社の特別税率の不適用制度
同制度は、適用期限をもって廃止されます。ただし経営革新計画の承認を受けている中小企業には、経過措置が講じられます。
〔適用期限の延長〕
1.適用期限が3年延長される事項
・退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止措置
・中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却または特別税額控除制度
・使途秘匿金の支出がある場合の課税(その支出額の40%の法人税)の特例制度
・優良賃貸住宅の割増償却制度における中心市街地優良賃貸住宅に係る措置 など
Q:個人所得関係では、どのような改正がありますか?
A:住宅省エネ改修工事の受託借入金等の特別税額控除の創設や、今年で期限切れとなる上場株式等の譲渡・配当所得の税率の軽減延長などがあります。
(1) 住宅省エネ改修工事に係る住宅借入金等がある場合の特別税額控除
居住する家屋に一定の省エネ改修工事を含む増改築を行った場合、その家屋を平成20年4月1日から同20年12月31日までの間に居住用としたときは、一定の要件の下で、その省エネ改修工事等に充てるために借り入れた住宅借入金等の年末残高の1,000万円以下の部分の一定割合を所得税額から控除する制度が創設されます。この特例は、住宅の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除との選択適用とされ、控除期間・控除率等は表3のとおりです。
〔対象となる省エネ改修工事とは?〕
以下に該当する工事で、費用が30万円を超えるものが対象となります。
1.居室の全ての窓の改修工事、または1.と併せて行う 2.床の断熱工事、3.天井の断熱工事もしくは 4.壁の断熱工事で、省エネ性能が平成11年基準以上となり、かつ、住宅全体の省エネ性能が改修前から一段階以上上ること
| 居住の用に 供する時期 | 控除 期間 | 住宅借入金等の 年末残高 | 控 除 率 |
|---|---|---|---|
| 平成20年 4月1日から 同20年 12月31日 |
5年 | 1,000万円以下 の部分 |
ア.その増改築等に係る住宅借入金等の年末残高のうち、特定断熱改修工事等(断熱改修工事等のうちエネルギー使用の合理化に著しく資するものをいう)に要した費用の額(200万円を限度)に相当する部分の金額・・・2% イ.その増改築等に係る住宅借入金等の年末残高のうち、ア以外の部分の金額・・・1% |
(2) 電子申告で添付省略できる第三者作成書類の追加
所得税の確定申告書の提出を電子申告で行う場合、一定の要件の下、税務署の提出または提示を省略できる第三者作成書類に次の書類が追加され、添付しなくてもよくなりました。ただし保存は必要です。
・給与所得者の特定支出の控除の特例に係る支出の証明書
・雑損控除、寄付金控除、勤労学生控除の証明書等
・個人の外国税額控除に係る証明書
・住宅借入金等特別控除に係る借入金年末残高証明書(適用2年目以降のもの)
・バリアフリー改修特別控除に係る借入金年末残高証明書(適用2年目以降のもの)
・政党等寄付金特別控除の証明書
適用は、原則的には、平成20年1月4日以後に、平成19年分以後の所得税の確定申告書の提出を電子申告で行った場合です。
(3) 特定中小会社へ出資した場合の優遇措置(エンジェル税制)に寄付金控除を適用
個人が、一定の要件を満たす特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例として、その出資金額について1,000万円を限度として寄付金控除が適用できます。
※ この特例の創設により、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の2分の1課税の特例は廃止されます。
適用は、平成20年4月1日以後に特定中小会社の株式を払込みにより取得した場合です。
(4) 上場株式等の譲渡所得等に2年間の特例
従前の軽減税率が適用期限で廃止される代わりに、一定の譲渡所得については特例が設けられます。具体的な内容は次のとおりです。
〔軽減税率の廃止〕
上場株式等に係る譲渡所得の等の所得税7%(住民税と合わせて10%)軽減税率が平成20年12月31日で廃止されます。その後は、本則の15%(住民税と合わせて20%)となります。
〔特例措置〕
平成21年1月1日から同22年12月31日までの2年間に上場株式等を譲渡した場合には、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額のうち500万円以下の部分については所得税7%(住民税と合わせて10%)とされます。
なお、平成21年1月1日から同22年12月31日まで源泉徴収選択口座における源泉徴収税率を所得税7%(住民税と合わせて10%)とする特例が設けられます。
(5) 上場株式等の配当所得等に2年間の特例
従前の軽減税率が適用期限の到来で廃止される代わりに、一定の配当所得については特例が設けられます。内容は次のとおりです。
〔軽減税率の廃止〕
上場株式等の配当所得等に係る源泉徴収税率について、平成21年1月1日から同22年12月31日までの2年間に上場株式等の配当等(大口株主が支払いを受けるものを除く)に対する源泉徴収税率は所得税7%(住民税と合わせて10%)とされます。この場合、その年中の上場株式等の配当等、(年間1万円以下の銘柄に係るものを除く)の金額の合計額が100万円を超える人については、その超える年分について、確定申告をすることになります。
※上場株式等の配当所得について申告分離選択課税が創設されます。
(6) 上場株式等の譲渡損失と配当所得との損益通算の特例創設
その年分の上場株式等の譲渡所得の損失があるとき、またはその年の前年以前3年以内の各年に生じた上場株式等の譲渡所得損失の金額(前年以前に既に控除した金額を除く)があるときは、これらの損失の金額を上場株式等の配当所得の金額(申告分離課税を選択したものに限る)から控除(損益通算)されます。
適用は、平成21年分以後の所得税からです。
| 〜平成20年 | 平成21年 | 平成22年 | 平成23年 | |
|---|---|---|---|---|
| 上場株式等の 譲渡益 |
軽減税率10% (所得税7%、 住民税3%) |
特例措置10% (所得税7%、住民税3%) *ただし譲渡所得は500万円以下。 配当所得は大口株主が支払いを 受けるものを除く。 |
本則税率20% (所得税15%、 住民税5%) |
|
| 上場株式等の 配当 |
||||
| 上場株式等の 損益通算 |
申告による方法 | 申告による方法 または源泉徴収口座を 活用する方法 |
||
(7) その他
・特定上場株式等に係る譲渡所得等の非課税制度は、適用期限をもって廃止。・給与所得者等がその使用者から住宅資金の貸付け等を受けた場合の課税の特例(金利の優遇)の適用期限が2年延長
Q:相続・贈与関係では、事業継承税制などが話題になっていますね。
A:相続時精算課税制度の特例延長などがあります。なお新しい事業継承税制は来年度(平成21年度)税制改正に盛り込まれ、今年の10月1日に遡っての適用となる予定です。
(1) 住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例2年延長
20歳以上の受贈者(贈与者の子)が自己の住宅を取得(増改築を含む)するため、そ の親から資金(住宅取得等資金)の贈与を受け、相続時精算課税を選択したときは、相続 時精算課税に係る贈与税の特別控除を最高3,500万円とすることができる特例の適用期 限が2年延長されます。
(2) 新しい事業継承税制の導入(予定)
平成21年度税制改正において、中小企業(会社)の後継者を対象とした「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」が創設される予定です。 この制度は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」の施行日(平成20年10月1日予定)以後の相続等に遡って適用されます。この新しい事業承継税制の制度化に併せて、相続税の課税方式を「遺産取得課税方式」に改めることが検討されています。 この「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」の骨子は次のとおりです。
(1) 登録免許税の軽減税率の見直しと適用期限の延長
土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の軽減税率を次のとおり見直した上、その適用期限が3年延長されます。
1.土地の売買による所有権の移転登記
表5| 従 前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 1,000分の10 | 平成20年4月1日 〜同21年3月31日 | 1,000分の10 |
| 平成21年4月1日 〜同22年3月31日 | 1,000分の13 | |
| 平成22年4月1日 〜同23年3月31日 | 1,000分の15 | |
2.土地の所有権の信託の登記
表6| 従 前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 1,000分の2 | 平成20年4月1日 〜同21年3月31日 | 1,000分の2 |
| 平成21年4月1日 〜同22年3月31日 | 1,000分の2.5 | |
| 平成22年4月1日 〜同23年3月31日 | 1,000分の3 | |
(2) 長期優良住宅の所有権保存登記の税率軽減
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(仮称)の制度に伴い、個人が、同法の施行の日から平成22年3月31日までの間に新築又は取得(未使用のもの)する一定の長期優良住宅(仮称)に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税が次のとおり軽減されます。
1.所有権の保存登記
2.所有権の移転登記
以上が国税の改の主要な事項です。Q:一時「ふるさと納税」が話題になりましたが、地方税については改正はありますか?
A:ふるさと納税として、地方公共団体に対する寄付金税制が見直されています。また所得税などの改正に準じて地方税においても改正がされると同時に、固定資産税などについて改正が行われます。
(1) 地方公共団体に対する寄付金税制の見直し(ふるさと納税)
個人住民税における寄付金税制については、控除対象寄付金の拡大等が行われるほか、都道府県または市町村に対する寄付金税制(ふるさと納税)が見直され、以下で計算した金額(A)が別枠(特例控除額)として、(A)の5分の2が都道府県民税から、5分の3が市町村民税からそれぞれ税額控除されます。
(寄付金額―5,000円)×(90%−その人の所得税の限界税率)
・・・(A)(個人住民税所得割額の10%相当額が限度)
なおこの改正は、平成21年度分以後の個人住民税について適用されます。
(2) 省エネ改修を行った既存住宅に対する固定資産税の減額
平成20年1月1日に所在していた既存住宅で、同20年4月1日から同22年3月31日までに、一定の省エネ改修を行ったもの(賃貸住宅を除く)について、改修工事が完了した年の翌年度分に限り、その住宅に係る固定資産税額(1戸当たり120平方m相当分までに限る)の3分の1が減額されます。この適用に当っては、改修後3ヶ月以内に省エネ基準に適合する証明書を添付して市町村に申告することになります。この要件、省エネ改修工事の内容等については、所得税の場合と同様です。
(3) 認定長期優良住宅に対する固定資産税の減額
長期優良住宅の普及の促進に関する法律の施行日から平成22年3月31日までに新築された認定長期優良住宅について、認定を受けて建てられたことの証明書を添付して市町村に申告した場合には、新築後5年度間(中高層耐火建築物は7年度間)、その住宅に係る固定資産税額(1戸当たり120平方m相当分までに限る)の2分の1が減額されます。
以上が、平成20年度税制改正の主な事項です。